腎臓の働きと腎不全

腎臓の働き

腎臓は左右の背中側に1つずつあり、ちょうど握りこぶしぐらいの大きさです。人体においては主に以下の役割をもっています。

①老廃物のろ過、尿の生成
②体内水分量、電解質、pHの調節
③ホルモン分泌(造血作用や血管収縮などの作用)
④ビタミンDの活性化

腎臓の位置

腎不全とは

腎不全とは、腎臓の機能が低下して正常に働かなくなった状態のことです。腎不全には急激に腎臓の機能が悪化する急性腎不全と、数ヶ月から数十年の長い年月をかけて腎臓の機能が徐々に低下する慢性腎不全の2種類があります。

急性腎不全は適切な治療によって腎機能が回復する可能性がありますが、慢性腎不全は、腎不全の進行に伴って腎臓の機能が徐々に失われ、末期腎不全になると、失われた腎機能が回復する見込はありません。腎機能の低下の程度が軽い時期にはほとんど症状がありませんが、腎機能がかなり低下してくると、全身のむくみや、倦怠感、貧血、高血圧、食欲不振、吐気などのさまざまな症状が出てきます。

そして腎機能がおよそ10%以下にまで低下すると、腎代替療法(透析療法や腎移植)が必要となります。

透析療法には大きく分けて血液透析と腹膜透析があります。透析療法は腎機能の部分的な役割しか果たさないため、食事や水分の制限があります。また、長期になると、貧血や二次性副甲状腺機能亢進症、心血管系疾患などの合併症も問題になります。

腎移植は腎代替療法の中で、唯一根治的効果が得られる治療法です。

健康な腎臓を移植することで、腎機能はほぼ完全に回復し、時間に縛られることもなく、食事や水分を自由に取ることができます。ただし、移植腎がある限り免疫抑制薬を飲み続ける必要があります。

  血液透析 腹膜透析 腎移植
腎機能 悪いまま(貧血・骨代謝異常・アミロイド沈着・動脈硬化・低栄養などの問題は十分な解決ができない) かなり正常に近い
必要な薬剤 慢性腎不全の諸問題に対する薬剤(貧血・骨代謝異常・高血圧など) 免疫抑制薬とその副作用に対する薬剤
生命予後 移植に比べ悪い 優れている
心筋梗塞・心不全
脳梗塞の合併
多い 透析に比べ少ない
生活の質 移植に比べ悪い 優れている
生活の制約 多い(週3回、1回4時間程度の通院治療) やや多い(透析液交換・装置のセットアップの手間) ほとんど無い
社会復帰率 低い 高い
食事・飲水の制限 多い(蛋白・水・塩・カリウム・リン) やや多い(水・塩分・リン) 少ない
手術の内容 バスキュラーアクセス(シャント)(小手術・局所麻酔) 腹膜透析カテーテル挿入(中規模手術) 腎移植術(大規模手術・全身麻酔)
通院回数 週に3回 月に1~2回程度 移植後1年以降は月に1回
旅行・出張 制限あり(通院 透析施設の確保) 制限あり(透析液・装置の準備) 自由
スポーツ 自由 腹圧がかからないように 移植部保護以外自由
妊娠・出産 困難を伴う 困難を伴う 腎機能良好なら可能
感染の注意 必要 やや必要 重要
入浴 透析後はシャワーが望ましい 腹膜カテーテルの保護必要 問題ない
その他のメリット 医学的ケアが常に提供される、最も日本で実績のある治療方法 血液透析に比べて自由度が高い 透析による束縛からの精神的・肉体的開放
その他のデメリット バスキュラーアクセスの問題(閉塞・感染・出血・穿刺痛・ブラッドアクセス作成困難)
除水による血圧低下
腹部症状(腹が張る等)
カテーテル感染・異常
腹膜炎の可能性
蛋白の透析液への喪失
腹膜の透析膜としての寿命がある(10年位)
免疫抑制薬の副作用
拒絶反応などによる腎機能障害・透析再導入の可能性
移植腎喪失への不安

日本腎臓学会、日本透析医学会、日本移植学会、日本臨床腎移植学会
腎不全 治療選択とその実際2017年版


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