よくある質問Q&A

Q1

どのタイミングで移植施設を受診したらよいですか?

受診する時期は、どのタイミングで移植を受けるかによって変わります。透析導入前に移植を目指す場合は、主治医から腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)の提案を受けたタイミングで、移植施設の受診をお勧めします。この時点でCKDステージ4相当と思われますので、移植に向けて準備を始めてもよい時期です。CKDステージ5(eGFR<15ml/min)になると、導入前移植が実施可能です。ただし、レシピエントとドナーを十分に検査して手術を行う必要がありますので、準備には数カ月を要します。事前にご家族で移植について話し合いをしておくとスムースです。
もちろん、すでに透析を始められている方でも移植について随時相談可能です。透析担当医を通じてご連絡いただければ、病状の把握もスムースです。

Q2

腎移植希望登録とは何ですか?

腎移植を希望されながら身近にドナーがいらっしゃらない場合は、日本臓器移植ネットワークに腎移植希望者として登録する必要があります。これを、亡くなった方から腎提供を受けて移植を行う「献腎移植」といいます。
現状では10数年の待機を要しておりますが、透析患者さんの長期待機中は病状が変化します。患者さんの病状確認のため、待機中は年1回の移植実施施設への受診が必須になります。

Q3

腎移植後は温泉や海外旅行に行けますか?

もちろんいずれも可能です。
温泉については源泉かけ流しの入浴施設を薦めています。移植後で注意が必要なのはレジオネラ感染症ですが、衛生管理が不十分な循環風呂などでレジオネラ菌が繁殖するといわれています。打たせ湯やジャクジーから発生するミストを吸入することでレジオネラ肺炎に感染する可能性がありますので、最近は保健所の指導でジャクジーなどの使用を停止している施設もあります。
海外旅行について注意が必要な点は、感染症流行地域への渡航です。そのような地域へは渡航を避けることが望ましいです。やむを得ず渡航する際、ワクチン接種を勧められる場合がありますが、いわゆる生ワクチンの接種は移植患者さんには禁忌ですので、接種前に移植施設の主治医にご確認ください。

Q4

移植手術を受ける際に年齢制限はありますか?

厳密な年齢制限はありませんが、当科では60歳代までを目安としています。70歳代の方でも全身状態に問題がないようでしたら移植は可能ですが、全身麻酔での手術になること、術後は免疫抑制薬を服用することなどを考慮すると慎重な判断が必要です。
移植手術後は定期的な通院や免疫抑制薬の内服が欠かせませんが、これらの管理がご自身やご家族で問題なくできるか?という点も大切です。なお、当科では小児の腎移植は行っていませんが、おおむね高校生以上で実施可能です。

Q5

透析導入しなくても移植は可能ですか?

はい、可能です。透析を開始する前に腎移植を実施することを「先行的腎移植」と呼び、日本でも年々増加しています。本邦の腎移植のおおよそ4割が先行的腎移植です。先行的腎移植を成功させるためには、手術に向けて計画的に準備を進める必要があります。具体的にはCKDステージG3になったらご家族で腎移植についての話し合いを少しずつ始めていただき、ステージG4になったら実際に移植施設を受診していただくとスムースに移植の準備が開始できます。ステージG3〜4になったら主治医に移植希望を申し出ると良いかもしれません。もともとの腎臓病によって腎機能悪化の速度はさまざまですので、余裕を持った検討が大切です。なお、先行的腎移植はご家族や親類内でドナーになっていただける方がいらっしゃることが前提になります。

Q6

腎移植後、妊娠は可能ですか?

可能です。腎移植後数年経過し、移植腎機能や全身状態が安定していることが必要です。高血圧やタンパク尿を認めず、血清クレアチニン値は1.0mg/dL台以下であることが望まれます。また、移植後は免疫抑制薬を複数服用しますが、中には胎児の催奇形性を持つ薬も含まれています。したがって、妊娠を希望される方は事前にその旨を伝えていただき、妊娠前に免疫抑制薬の変更を済ませておく必要があります。いずれにせよ、妊娠出産は腎臓に負担を強いることがありますので、主治医と十分に相談しながら計画的な妊娠出産にすることが重要です。

Q7

術後、どれくらいで仕事(社会)復帰できますか?

明確な基準はなく、移植施設や患者さんの状態によって考え方は異なります。当院では3ヶ月目に移植腎生検を行いますので、そのタイミングまでは自宅療養をお薦めしています。ドナーの方も術後1ヶ月ほどは自宅療養が望ましいです。いずれにせよ患者さんの状態やお仕事内容で大きく変わりますので個別にご相談ください。

Q8

移植後、ワクチンは打っても大丈夫ですか?

一般的には術後1〜3ヶ月程度は避けた方が望ましいです。詳しくは外来主治医にご相談ください。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンは不活化ワクチンと呼ばれ、移植患者さんでも接種可能です。ただ麻疹や風疹、おたふくかぜに対するMRワクチンやMMRワクチンは「生ワクチン」と呼ばれ、移植患者さんには接種できませんのでご注意ください。新型コロナウイルス用のワクチンは「生ワクチン」ではありませんので、移植患者さんでも接種可能です。

Q9

拒絶反応を起こすと「移植は失敗」なのでしょうか?

いいえ、違います。移植後1年以内に何らかの拒絶反応と診断される方は5〜10%程度いらっしゃいます。様々な治療法を組み合わせて対応しますが、正確な診断を得るために移植腎生検を必要に応じて行います。拒絶反応にも様々な種類がありますが、主にTリンパ球が関与する急性拒絶反応は近年の免疫抑制薬の進歩で良好に抑制されています。
一方で近年は主にBリンパ球細胞が関与する「抗体関連型拒絶反応」は研究も進み、様々な知見が得られています。仮に拒絶反応と診断されてもステロイドパルスや血漿交換などで治療にあたります。一度の「拒絶」で直ぐに「移植は失敗」と判断されるものではありません。

Q10

健康には自信があるのですが、生体ドナーになれない場合もありますか?

生体ドナーの条件はもちろん「健康」ですが、検査をしてみないと最終的に判断できません。実際、ドナー検査の中で初めて要治療の疾病が見つかることもあります。また最近ですとドナーさん個々としては問題なくても、クロスマッチ試験といわれる「レシピエントとの掛け合わせ」で問題が生じる例もあります。これは検査技術の向上に伴い、拒絶反応のリスクが詳細にわかるようになっているからです。

Q11

移植後の外来通院はどれくらいの間隔ですか?

安定した腎機能や全身状態の場合ですと2〜3ヶ月毎になります。療養担当規則によって内服処方日数の上限が90日(睡眠薬などは30日)と定められているため、受診間隔が4ヶ月を超えることはありません。
一方で手術直後の時期や腎機能が不安定な時などは病態を迅速に把握するために1〜2週間毎(もしくはそれ以上)の受診をお願いする場合もあります。
療養担当規則:健康保険法により定められた医療機関や医師が遵守する約束事のこと

Q12

もし移植腎がダメになったら?

慢性拒絶反応や原疾患の再発などが原因で残念ながら移植腎機能が低下した場合は透析導入を検討しなくてはなりません。もし生体ドナーがおられれば2回目の移植(二次移植)も検討しますが、それが難しい場合は献腎移植希望登録(年齢等で登録が難しい例もあります)が可能です。透析の場合は少しずつ導入準備(内シャント手術や透析クリニックの選定など)を進めていきます。なお免疫抑制薬は直ぐには中止することができず、半年〜1年ほどかけてゆっくり減量、中止するため、しばらくは当院にも通院していただきます。

Q13

生体腎移植を希望し、検査が始まりました。検査結果が心配です。

移植前検査の主な目的は①悪性腫瘍がないこと ②全身麻酔に耐えられる心身であること ③ドナーさんの腎機能 ④免疫学的リスクの有無で、これらが問題ないことが必要です。特に③については慎重に時間をかけて判断します。また④についてはクロスマッチ検査を行い、拒絶反応のリスクが高いと判断されれば移植の中止やドナーさんの変更が必要になることもあります。レシピエント、ドナーに問題がないことを確認しながら検査を進めますので、数ヶ月を要します。術前検査中に治療が必要な疾病が新たに見つかることも稀にありますが、その場合は治療を優先し、移植手術は延期もしくは中止になります。

Q14

脱感作療法が必要と言われました。どういうことですか?

レシピエントが移植前から移植される臓器に対する「抗体」を保有している場合、これら「抗体」を減ずる必要があります。これらの一連の処置のことを「脱感作療法」といい、免疫抑制薬投与や血漿交換療法、高用量ガンマグロブリン投与などを組み合わせて行います。「抗体」の「脱感作」が不十分だと拒絶反応のリスクが上がりますので、慎重に処置を計画します。過去に輸血歴や妊娠歴があると抗体の保有の可能性が上がると言われています。血液型不適合移植の場合も原則「脱感作療法」が必要になります。

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