腎移植とは

腎移植とは

腎移植は、末期腎不全の腎代替療法の1つで、働きを失った腎臓の代わりに、ドナー(臓器を提供していただく方)から左右の腎臓のどちらかの提供を受け、手術で移植することによって、腎臓の機能を回復させる治療法です。腎代替療法の中で、腎不全を根治させる唯一の治療法です。
日本の透析患者数約34万に対して、移植を希望し献腎移植希望登録をされている方は約1万3,000人となっています。また、日本における2022年の腎移植数は1,785例となっており、そのうちの献腎移植は198例、生体腎移植は1,587例となっています。

腎移植の種類

腎移植には、生体腎移植と献腎移植の2種類があります。

◇生体腎移植

親、兄弟、祖父母などの血縁者や、夫、妻などの非血縁者から2つの腎臓のうちの1つをもらって移植する方法。現在では血液型が異なっても、手術前に処置を行うことで移植が可能となっています。

◇献腎移植

脳死や心停止で亡くなられた方からの善意により、腎臓の提供を受け、移植する方法。日本臓器移植ネットワークに、「腎移植希望者」として登録する必要があります。当院は、献腎移植施設であり、登録用のHLA検査施設も兼ねているため登録手続きが容易です。

移植の種類

腎移植の適応について

◇レシピエント(腎臓の提供を受ける方)

慢性腎不全を患っているすべての方が対象となります。透析をすでに始められている方はもちろんのこと、これから透析をスタートされる予定の方も対象となります。
年齢や腎不全の原因となった病気(糖尿病など)の進行具合、透析期間によっては、手術が難しい場合もあります。また、悪性腫瘍や感染症がある場合は残念ながらすぐに移植手術は行えません。
患者さん個々で状況は異なりますので、まずは遠慮なくご相談ください。

[対象疾患]糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎、ANCA関連腎炎、先天性腎低形成、馬蹄腎、嚢胞腎など

◇ドナー(腎臓を提供していただく方)

生体腎移植の場合、6親等内の親族ならびに3親等内の姻族がドナーとして腎提供が可能です。自ら提供の意思をお持ちの方で健康であれば、改めて全身の精密検査を行い、腎提供が可能かのチェックを行います。特に腎機能、悪性腫瘍の有無については念を入れて検査を行います。

参考:ドクターコラム「生体腎移植ドナー基準について」

移植の種類

◎レシピエントとドナーの血液型について

レシピエントとドナーの血液型が違っても移植は可能です。血液型が異なる移植(ABO血液型不適合移植)を行う場合は、手術前に血液浄化療法(血漿交換、二重濾過血漿交換法)を追加することで、レシピエントの体内に存在する抗体を事前に除去しておきます。また免疫抑制薬も術前から内服します。
このような追加処置により、現在では血液型が違っても安全に移植することが可能です。

当科における直近5年間の
血液型不適合移植の割合

当科における直近5年間の血液型不適合移植の割合

当科では30%程の症例が血液型不適合移植です。
A→B、B→A、AB→O、A→O、B→Oの組み合わせが血液型不適合移植に相当します。

◎年齢について

レシピエント

上限年齢は決まっていませんが、高齢になるほど心肺機能の衰えなどもありますので、慎重に検討する必要があります。最終的には検査を受けていただいて、手術可能かを判断します。

ドナー

ドナーの年齢は生体腎移植ドナーガイドライン(日本移植学会、日本臨床腎移植学会)に基づき、20歳以上70歳以下とされていますが、身体年齢を考慮して慎重な判断のもとでは80歳までは許容されます。ただし、最終的には検査の結果を踏まえた上での判断になりますので、詳細はご相談ください。

当科における直近5年間の
腎移植レシピエント・生体ドナーの年齢

当科における直近5年間の腎移植レシピエント・生体ドナーの年齢

腎移植を受けられる方(レシピエント)は50代、60代の方が半数を占めています。
最近では70代の方も移植を受けられています。

◎透析導入について

透析導入前でも腎移植は可能です(先行的腎移植)。移植成績はむしろ良好であるという報告もあり、先行的腎移植は近年増加しています。腎移植を検討されている方はクレアチン値に関わらず、まずはご相談ください。

当科における直近5年間の
先行的腎移植(PEKT)の割合

当科における直近5年間の先行的腎移植(PEKT)の割合

当科では半数が先行的腎移植症例です。すなわち透析を始める前に移植を行いますが、近年増加傾向です。
PEKT(ペクト)を成功させるためには早めの準備が必要です。
eGFR30を下回ったら主治医もしくは当科にご相談ください。

◎夫婦間での移植について

夫婦間のような非血縁者間での生体腎移植も可能です。
近年は免疫抑制療法の進歩や血液型が異なっても移植成績が良好なことを背景に、全国的にも夫婦間での腎移植も増えています。

当科における直近5年間の
夫婦間移植の割合

当科における直近5年間の夫婦間移植の割合

当科では50%程の症例がご夫婦間での生体腎移植です。近年、徐々に増えています。


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