急に透析導入になると大変です!
事例:Bさん(40代男性)
- 疾患名
- 不明(初診時、CKD5)
- 経過
-
40歳 会社の健診でクレアチン値が9mg/dLだったが、自覚症状が無かったため放置する 41歳 4月頃から倦怠感・貧血症状・頭痛が出現
5月、末期腎不全にて緊急入院、輸血・血液透析開始
移植コーディネーターchie(以下:Co):突然の腎不全の宣告でしたね。
薄々何か病気があるんじゃないかと思っていたけど、先生に、「あと2日遅かったら命がなかった」と言われて、そんなに悪かったのかとびっくりしました。よく分からないまま治療が進んでいき、何で腎臓が悪いのだろう?と思っていました。いまだに、何で自分なのだろう?と思います。
Co:40歳の健診までは、腎機能について指摘されることは無かったのですか?
異動前の営業所の健診内容には、クレアチン値が入っていなかったから、腎臓が悪いことを指摘されることはありませんでした。
Co:病院に行くきっかけは何でしたか?
40歳の健診でクレアチン値が9mg/dLだったので、「病院に行け」と言われたんだけど、何も症状が無いし、何が悪いのかな?と思って、病院は行かなかったんです。
次の健診前に、徐々にめまいや頭痛がひどくなり、頭痛薬も効かないし、だるくなってきて、ある日会社を早退して寝ていたところ、妻に病院へ連れていかれました。
Co:なぜ血液透析を選んだのですか?
治療法を決める時に、家族が、「腎臓を提供してもいい」と言ってくれたんだけど、管を入れてすぐに透析が必要ということだったので、そのまま血液透析を選びました。
Co:緊急入院でしたから、仕事の引継ぎなどが大変だったのではないでしょうか。
入院の次の日に職場に電話して、「1週間位で戻るから」と伝えました。引継ぎは電話やメール等でしましたけど、書類を持ってきていないから、必死で取引先や担当者の名前を思い出していました。進行途中の案件もあったから、気になって仕方がなかったです。
Co:その後、透析を受けながら移植することになりましたが、どのような点に苦労しましたか?
透析を受けるために仕事をセーブしないといけなかったり、透析中に血圧が下がったりと、透析と仕事の両立はしんどかったです。食事管理も大変で、いろいろと制限があったから、人と一緒にご飯を食べるのを避けていました。
Co:Bさんもそうでしたが、健診で異常を指摘されても症状が無いから病院に行かない人は多いと思いますが、Bさんの周りの方は如何ですか?
自分は、病院に行ったら何か病気が見つかるのではと怖い気持ちがありましたが、自分の経験を踏まえて、周りの人には、体調がおかしいとか、健診で異常があったときは、すぐに病院に行くように勧めています。自分のように、気づいたら…という結果になってほしくないので。
急に透析導入になると、以下のようなことに困ることが多いです。
- 入院中の育児や介護をどうすればいいか
- 仕事を途中で引き継がないといけない
- 食事内容を変えないといけない
- 計画的な手術でないため、入院が長くなる
- 自分に本当に合った腎代替療法の選択が出来ない
etc.
今回の患者さんのように、急に透析導入になると、心の準備も追いつきませんし、直ちに治療や食事を含めた生活スタイルの変化を余儀なくされます。
CKDステージが高くない時期から、腎不全の知識を少しずつつけていくと、仕事内容の変更や職場の理解も得やすいですし、育児や介護の手配が出来るため、治療に専念できます。また、透析を介さずに腎移植を受けられる場合もあります。
最後に、Bさんは危機的状況を奥様の判断・行動で救われました。Bさんも言っていましたが、家族・知人の方への、「病院に行こう」の声かけは、「自分は病気なのではないか…」という不安を抱えている人の、受診への大きな後押しになりますので、お互いに声をかけていきましょう。