腎臓病センターで診る疾患について

当センターでは腎実質障害の全て、すなわち尿所見異常のみの軽症の腎臓病から、末期腎不全まで、腎移植治療を含めて腎臓病患者さん全般を広く診察しております。

具体的には、腎臓内科が中心となって、内科的腎疾患の全て、すなわちIgA腎症を代表とする各種糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、間質性腎炎、血管炎・膠原病・糖尿病・高血圧・動脈硬化・痛風・感染症など全身性疾患に伴う腎臓病、多発性嚢胞腎・ファブリー病・アルポート症候群などの遺伝性腎臓病、急性・慢性腎不全など、多岐にわたる疾患を対象に、臨床所見に加え腎生検組織所見などを含めた精査をし、センタースタッフがカンファレンスで総合的に協議・診断したうえで治療方針を決定しています。
特にIgA腎症に対しては、当院の耳鼻咽喉科の協力のもとで、根治的な治療として扁桃摘出術+ステロイドパルス療法を積極的に実施し、治療抵抗例に対してはさらに上咽頭炎に対するBスポット療法を実施しています。
また、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対しては、新しい治療法であるトルバプタンの内服の導入を2泊3日の入院コースにより対応しています。ただし、本治療が適応になるのは、ADPKD患者さんの全てではなく、腎機能や嚢胞の増大速度などに関する一定の基準がありますので、あらかじめ当科を受診し、適応を確認する必要があります。

さらに最近、慢性腎臓病全般の進行を抑える治療法として、非常に注目を集めている選択的SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン)に関しても、地域の医療機関と連携をしながら、早い段階からの積極的な投与開始を進めています。

一方、末期腎不全の患者さんに対し、当センターでは腎代替療法として血液透析、腹膜透析、腎移植の全てに対応しており、患者さんの病状・社会的背景などを勘案して最良の療法選択をお勧めしています。腎移植はもちろんのこと、血液・腹膜透析の導入やアクセストラブルに際しては、腎臓外科による外科的な介入が必須となります。
さらに血液浄化療法室では、慢性の末期腎不全患者に対する血液透析療法に加え、急性腎障害患者に対するCHDFなどの急性血液浄化療法、血漿交換・エンドトキシン吸着・顆粒球除去などの各種アフェレシス療法、さらに難治性腹水患者に対する腹水濾過濃縮再静注法(CART)など広範な治療法に対応しています。

一点ご注意いただきたいのは、腎実質の疾患ではない、尿路結石、腎癌、前立腺肥大症・癌、膀胱尿管逆流症、尿路感染症などで、これらは主として泌尿器科が担当し、当センターでは対応しておりません。紹介時にご注意いただければ有難く存じます。